行動経済学という学問の確立に貢献し、2002年には心理学者として初めて、ノーベル経済学賞を受賞したアメリカのダニエル・カーネマンが、幸福のとらえ方にはふたつの要素があると言っています。
「経験の自己」と「記憶の自己」というものですが、これらは自分の中にふたつの自己が存在し、それぞれ幸福に対してとらえ方が異なるというのです。
■経験の自己=今を楽しむことによって得られる幸福感
■記憶の自己=苦しいことを経験しながら、振り返ってみると「あれをやって良かった」と感じられる満足感がもたらす幸福感
では、どちらがより幸福なのか?振り返った時に楽しかったと継続的に幸福を感じられるのは、ふたつめの「記憶の自己」がとらえる幸福感だと言われています。
穏やかに快適に暮らす幸せもあります。ですが、時間が経って振り返ったときに「あの時は大変だったけど、今考えるといい経験になった」と思えることのほうが、脳はより幸福を感じるのです。
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企業が高学歴を優遇するワケ
企業が高学歴の応募者を優遇する理由のひとつに、「難関大学出身者は、これまでの人生において受験というひとつの困難なハードルを乗り越えた経験を持っている」ということがあります。
仕事をしている社会人には、自分の力でなんとかしなければならない困難がたくさん待ち構えています。課題解決能力が低く、すぐにつまずいてあきらめてしまうような人材を採用したとしたら、会社にとっては余計なコストがかかってしまいます。努力によって合格という結果を出したことのある難関大学出身者には、その点で信頼が置けるということです。
大学受験勉強は、人生で一番勉強する辛いイベントかもしれません。でも、それを乗り越えた経験は第三者である企業の人事部が見ても評価に値するわけです。このように就職活動の時に、大学受験勉強を苦労しながらも頑張ったことを評価されれば、「大変だったけど、あの時頑張って良かった」と思えることでしょう。
登山やマラソンを趣味にする人が増えています。未経験の人から見れば、「あんなしんどい思いをして、何が楽しいのだろう?」と思うはず。でも、あの苦労の後の満足感は経験した人にしかわからない、最高の幸福感なのでしょう。
次回に続く
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